第5回講座 う蝕(虫歯) 2

1.う蝕(虫歯)のできやすい場所

1)小窩裂溝う蝕(虫歯)

う蝕虫歯)は、できやすい場所があります。できやすい場所を写真で見てみましょう。

虫歯のできやすい場所

臼歯部の咬合面(咬む面)は、小さな溝(黄色の円)や、くぼみ(緑色の円)が見えます。
また、前歯部の内側(口蓋側とか舌側と言います)にも見られます(赤い色の円)。これらを小窩裂溝(しょうかれっこう)と言います。
そこには食べ物や細菌がたまりやすく、特に子供の歯は小窩裂溝が深く、ここからう蝕虫歯)になることが多いです。

また、外から見てそんなに深くないと思われるう蝕虫歯)でも、表面を削ってみると、意外に深く浸食されている場合もありますので、自分で判断しないで、専門家に診察してもらってください。
既にお話ししたように、色々なう蝕虫歯)検出方法が開発されて、早く見つければ必要以上に歯を削らないで済みます。

2)平滑面う蝕(虫歯)

歯の「つるっ!」とした部分は、通常、う蝕虫歯)には、なりにくいところです。
しかし、乳幼児が常に、ほ乳瓶をくわえて寝てしまったり、永久歯でも、歯の面に‘べたべた’した食べ滓を着けたままで生活すると、下記の写真のようにう蝕虫歯)になります。

平滑面う蝕になっている歯

緑の円の歯は、フッ素を使い、きっちりとした歯磨きをすることで、削らないで回復することがあります。
黄色の円の歯は、エナメル質に細菌が完全に入り込み、う窩になると削らなければ元に戻るのは難しいと思われます。
この場合は、歯を削って細菌を追い出したあと材料を詰めて修復します。

3)接触面う蝕(虫歯)

接触面う蝕になっている歯

歯と歯の接触するところは(緑色の円)食べ物がたまりやすく、また、磨きにくいところです。そのために、この部分からう蝕虫歯)の発生することが多く見られます。この部分を、歯間ブラシや糸楊枝できれいにしておくことが大切です。
これは前歯部ですが、小臼歯大臼歯も同じです。

2.う蝕(虫歯)の進行

  1. 歯の表面にできたう蝕(虫歯)は、う窩(虫歯の穴)になります。このころに‘しみ’始めます。
  2. 神経の穴の中に細菌が侵入し、神経や血管を殺します。そのときにとても痛い思いをします。
  3. さらに神経の穴の中を深く細菌が侵入し、歯の根っこの先から外に出ます。
  4. そこに膿(うみ)の袋を作ります。下記、右写真の青色で囲んでいる部分は、根の先から歯の外に出た細菌によって作られた膿(うみ)の出口です。
う蝕の進行の様子

3.根っこの治療(根管治療)

(うみ)の袋から歯ぐきの外に出た細菌も、神経の穴を完全に治療すると(うみ)の袋がなくなる場合があります。下記の右の写真は、治療途中の歯で、細い‘やすり’のような道具を使って、感染した歯髄腔を治療しているところのレントゲン写真です。

4.根っこに薬を詰める(根管充填)

下記のレントゲン写真は、根管に長くもつ薬をきっちりと入れて、填塞したものです。このようにきっちりと治療をすると、下記の右の写真のように、ほぼ1週間で、(うみ)の出口はふさがれます。完全に治療できると、1週間位でこのようにきれいに(うみ)の袋がなくなる場合があります。

根管充填の様子

5.う蝕(虫歯)の治療方法

1)C0

エナメル質の軽度のう蝕

エナメル質に軽度のう蝕虫歯)があり、放置すると進行します。この場合、自分でフッ素を使い歯磨きすることと、歯科衛生士からプロフェッショナルケアーを受けて、予防しながら観察し、う蝕虫歯)進行しないようにします。

2)C1

エナメル質が溶けはじめた浅いう蝕

表面のエナメル質が溶けはじめた浅いう蝕虫歯)で、ほとんど痛みはありません。この段階での治療はう蝕虫歯)の部分を削除して修復材をつめるという比較的簡単な治療ですみます。

3)C2

象牙質まで進行したう蝕

エナメル質の深いところや、象牙質にまでう蝕虫歯)細菌が侵入すると、残念ながら歯科医師が切削器具を使って削らなければなりません。

4)C3

歯髄腔まで進行したう蝕

歯髄腔(歯の中の神経や血管の入っている穴)の中まで細菌が入ると、神経の治療をしなければなりません。

5)C4

虫歯が進行して根っこだけになってしまった歯

根っこだけになると、抜かなければならない可能性が大きくなります。早く治療して、根っこが健全であれば、その根を土台にして歯を作ることができます。

6.まとめ

  1. う蝕虫歯)は、口腔内に常にいる細菌(常在細菌)により、歯の硬組織が感染症になる病気です。
  2. 正しいケアーを行うことにより、う蝕虫歯)になりにくくなります。
  3. 早く見つけると、痛くなく治療できます。
  4. 手遅れは、痛い思いをしたあとで、もう一度痛い治療をしなければなりません。
  5. 生活習慣、食習慣でも予防することができます。その意味では生活習慣病です。